研究課題
3年間の研究の最終年度として、これまでに整備した介護医療保険サービスデータやクレジットカード利用履歴データなどの実際のデータのデータベースなどに基づき研究を進めた。本研究では、(1)時点ごとの個人類型の抽出の方法、(2)個体の時間発展の表現法、(3)注目する原因系変量と結果系変量に関する確率的因果モデルの定式化法の3点を目標とした。時点毎の状態をSOMなどにより層別して時点個人類型を構成し、その上で、時間発展に対し時間発展類型を構成することが基本アプローチとなる。このうち(1)ついて、これまでの遷移関係のモデル化の検討の中で、類型間の距離関係構造がSOMマップ上での距離関係に適切に反映されていない部分があると、遷移関係のモデル化が困難が生ずることが分かった。これを踏まえ、本年度はまず、時点個人類型の抽出法の再検討を行った。まず、類型間の距離関係構造がSOMマップ上に反映される類型化の方法として、サンプルの位相関係が適切に表現できるようにSOMマップの形状を変形する可変自己組織化マップを提案した。これについてクレジットカード利用履歴データについて分析例を与えた。また、注目現象に関する因果確率モデルの提案としては、データ解析コンペティションに参加して解析したデータについて、メニューリコメンデーションシステムとして、前日メニューを配慮した当日メニューの予測を行う多項ロジットモデルを提案した。ここでは、メニュー遷移の説明モデルに因果関係を説明する回帰構造を想定したモデルを提案している。さらに、医療需要の時系列変化や、個人間の会話関係の変化について、事例分析を行って発表した。以上を通じ、介護医療福祉の領域、経営の領域で有益な知見を得られるモデルとその解法を提案できた。
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オペレーションズ・リサーチ Vol.55, No.2
ページ: 91-97