本研究では脳波・脳磁図の誘発磁場の時系列データから得られる伝達関数等の動的情報を抽出し、脳の働きを理解するために必要となる統計的手法の確立を試みた。 その際、定常確率システムと考えられる脳活動のダイナミックス(脳機能に関連する活動部位間の連関)の情報を含んだ誘発磁場データを分離する必要がある。 当初、誘発磁場の持つ周期性に基づきその時間構造に基づく独立成分解析で分離しようとしたが、その分離は不完全であった。誘発磁場には特徴的な時間構造があり、周期的刺激はその最たるものである。この場合の誘発磁場は確定周期であったためにパワースペクトルには繰り返しピークが発生していた。そこで、このピークなる高調波に相当する時間構造に基づく分離を試みた。その際、独立成分には若干の相関が残るので、この分離は独立成分分離でなくブラインド分離であった。 このブラインド分離を5Hzの正中神経繰り返し刺激の脳磁場応答データに適用すると予想される反対側の第1次体性感覚野以外に、同側の第1次体性感覚野やその付近に位相が刺激に同期したβ波とか同側の聴覚野付近に活動がダイポールの形で分離された。さらに、これまで知られている体性感覚野の時空間応答はフーリエ展開のように分解され、それらの活動も新たに分類されると分かった。 この分類に応じて脳磁図データから再構成したデータにフィードバックシステム論的同定手法を応用し、今後、脳の動的構造(脳機能連関)を解明する予定である。
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