研究概要 |
多変量の地理情報データを解析する場合,いきなり回帰式などの数式モデルをあてはめるのではなく,まずグラフなどの視覚化ツールを用いてデータを眺めることがその後の解析にとって重要である。従来では,地理情報データに対しては地図や地形図などの平面的な図を用いることが多かったが,これは高さに関する情報を把握することが難しいという問題がある。これを補うことを目的として,今年度,地理情報データを立体地形図上で表示することができるシステム(プロトタイプ)を開発することができた。これは,観察したいエリアをよりわかりやすくするために,対話的に視点などを変更する機能をもっている。さらに,今年度の成果として,多変量の地理情報データを解析する場合,平行座標プロットや散布図行列などのグラフィックスと地形図を連動させることで地図上では表現しづらい多変量データを同時に観察することができるシステムを開発した。このシステムを利用して徳島県の高齢者の市町村別に集計された自殺者データと社会基盤を表すデータを解析すると,自殺者の多い地区は,徳島県の山間部で,そこは人口辺りの小学校数が多く,高齢化が急激に増加していることをグラフィック上で把握することができた。また,多変量の地理情報データを地形図上で条件による色分け(フィルタリング機能)をすると,目的変数に対するその変数の位置に関する偏りを視覚的に発見しやすいことがわかった。この機能は立体地形図にとっても有効であると思われる。
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