研究概要 |
混獲データは、対象魚種の漁獲データとは異なる特徴を持つ。これは操業の場所や条件はあくまでも対象魚種を獲るために選択されるのであって(一部の海洋哺乳類を除いては)混獲生物の状態とは直接の関係がないことによる。混獲データの数値上の特徴はゼロの割合が高いことである。本研究では全米熱帯マグロ類委員会(IATTC)のCleridy Lennert-Cody博士と共同で混獲生物の資源評価・生態学的考察のための統計手法の開発とデータ解析を行う。また、海洋資源評価のための一般的な統計手法の開発も行う。 (1)混獲生物の資源動向の解析のための統計手法の研究:サメやウミガメといった個別の混獲生物の資源動向を把握するための統計手法を開発する。漁獲対象魚種に対するCPUE解析に対応するものであり、様々な条件(説明変数)が与えられたときの混獲数の条件付平均を推定するという回帰問題である。これまでに、平滑法を用いたZero-inflated負の2項回帰モデルを提案し、浮遊物によるマグロ巻網漁のサメの混獲数を解析した研究を行っているが、平滑パラメータの選択方法、係数の推定方法、モデル選択の方法についてより良い方法を考え、提案する。 (2)混獲組成の解析:各漁で混獲された様々な海洋生物の混獲数データから海洋生物種間のかかわりを解析するために、非正規性の強いデータから特徴量を抽出する方法を開発する。これは視点をかえると非正規データの次元の削減問題と捉えることができる。非負行列因子分解法(Non-Negative Matrix Factorization, NMF)の統計学的見地からの改良、具体的にはTweedie分布,一般化線型モデルの概念をNMFに用いた方法の研究を行う。 (3)対象魚種データの解析手法を混獲データに応用することによる問題点の紹介:対象魚種データの解析に用いられている手法を性質の異なる混獲データに応用する場合に起こりうる問題点を統計理論の視点から指摘する。
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