研究概要 |
本研究では単量体の蛋白質構造からの結合分子の種類や結合力、結合部位の推定を最終目標とする。本年度は、開発を進めているモルフォロジーを利用したポケット認識プログラムghecomを用いて、以下の三つの研究を行った。(1)ポケット部に結合する分子を予測するため、同一分子が結合する既知結合部位のタンパク質の原子配置がどの程度類似しているか、調査を行った。PLP, FAD, ADPについて調査したところ、進化的に関係のない別のスーパーファミリーに属するタンパク質では、類似性が高くはないが、最近接原子のみに注目すると、ランダムレベルに比べ有意に類似していることがわかった。この成果は日本蛋白質科学会年会において発表した。(2)ポケット部の機能的重要性を調べるため、病因性のnsSNPに注目し、中立なnsSNPのサイトと、ポケットの深さに違いがあるかどうか調べた。病因性のサイトはより深いポケット部に多いことがわかった。配列保存度や溶媒露出度など他の特徴量と組み合わせることで、より高精度に病因性のサイトを識別できることがわかった。この成果は日本生物物理学会にて発表した。(3)これまで、ポケットの定義をメチル基の大きさのプローブ球が進入できる空間に限定していたが、より現実の分子に近づくよう、ベンゼン、アデニンなど非球状の任意形状のプローブに対応できるようなアルゴリズムを拡張した。これにより、計算時間は増大するが、特にヘム結合部位の結合部位予測の性能向上が見られた。
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