研究概要 |
トップダウン信号が如何にして心的イメージやエピソード記憶などの内部表現を再構築するのか 前年度までの研究に基づき、皮質上層部(1層と2/3層)神経系のアナトミカルかつ生理学的な配置を考慮し、擬アトラクタ概念を基礎とする動力学シナリオを提起した。 トップダウン注意にともなって、皮質1,2/3層において同時的に働く3つの生理学的機構が存在する。この3過程が皮質動力学にどのように働き、過渡的なアトラクターの再構成を生起させるのかに関するシナリオを提起し、今後の数理モデル構築の基礎的枠組みを設定した。 シナリオI(ムスカリン性シナプス前抑制)注意による前頭前野により駆動された皮質求心性アセチルコリン投射が、2/3層錐体細胞への介在ニューロンからのGABA放出を抑制する。この過程により擬アトラクター(内部状態)状態が一時的に安定化され、アトラクター状態へと過渡的に再構築される。 シナリオII上位の皮質領野から1層への(トップダウンの)グルタメート性スパイク集団は断片としての擬アトラクター(内部状態)を指定し、同時に内部状態をバインドするインデックス信号として機能する。 シナリオIII(位相リセットによるシンクロニー)1層のCR陽性の介在細胞系の役割:(アセチルコリン投射により、ニコチン様受容体によって脱分極し、つぎにそのスパイクが2/3層のPV陽性FS(fast spiking)介在細胞を抑制する。その結果は、ガンマ周波数帯のシンクロニーの位相をリセットし、新たに局所的または複数の領野をまたがる大域的なガンマ周波数帯のシンクロニーをスタートアップする。この後者には、前頭前野からのトップダウンのシータ波が関与する可能性がある。
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