研究課題
平成20年度は鶏雛(ヒヨコ)を対象として実験心理学的に統制された行動実験を実施し、動物の採餌選択における文脈依存性に関して、以下の3点の知見を得た。リスク感受性選択 : 行動滴定法(behavioral titration)を用いて、ヒヨコのリスク感受性を解析した。二つの餌場を用意し、その一方からは常に小さな利潤率を与え、他方からは等確率(p=1/2)で高低2種の利潤率を与えた。ここで、利潤率とは、報酬量(餌の量)を処理時間(遅延と消費時間の和)で割った商である。利潤率のリスクは、量を変動させても、遅延を変動させても、等価に実現できる。結果、ヒヨコは量のリスクに対しては回避(aversion)を、遅延のリスクに対しては選好(proneness)を示した。量と遅延は等価ではない。収益逓減 : 即時利益率が徐々に逓減する餌場を作り、離脱までの餌場利用時間を計測した。結果、利用時間は試行毎に大きく異なり、その分散値は平均の二乗にほぼ比例した。よって、離脱決定はボアソン過程によって近似できると推定された。さらにSSRI(セロトニン選択的再取り込み阻害剤)の投与が利用時間を有意に延長した。基底核におけるセロトニン放出量が離脱決定確率を支配しているとの予測の下、現在、インビボ・マイクロダイアリシス法によるセロトニン量の計測を行っている。競争採餌と衝動性 : 「小さくて近い餌」と「大きくて遠い餌」の二者択一における選択を、ヒヨコで計測した。3羽同時にトレーニングすることによって競争的状況に置かれた場合、その後に単独で選択させた結果は著しい衝動性の亢進をしめし、「小さくて近い餌」を選ぶ割合を高めた。競争採餌は衝動性を高める。
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Brain Research Bulletin 76
ページ: 245-252
ページ: 275-281
ページ: 282-288
http://www.sci.hokudai.ac.jp/~matusima/chinou3/Welcome.html