研究概要 |
神経特異的前初期遺伝子産物Arcは、LTPやLTD等の長期シナプス可塑性および長期記憶形成に必須な分子である。しかしながら、Arc遺伝子の発現制御機構や遺伝子産物の動態・機能制御機構に関しては未だほとんど不明である。本研究ではArcスパイン局在機構および遺伝子活性化機構の解析を行い、以下の成果を得た。 1.Arc蛋白のスパインにおけるPSD蛋白との相互作用 Arcはシナプス刺激により速やかに発現誘導された後、樹状突起スパインに挿入される。このスパイン局在はArc-PSDタンパクとの相互作用によって制御されていることを見いだした。さらに蛍光タンパク融合Arcを神経細胞に活動依存的に発現させる系を確立し、生細胞イメージングによりArcのスパイン挿入・シナプス集積を可視化した。 2.Arc遺伝子の神経活動依存的発現機構 上記の活動依存的発現系を構築過程において、Arc遺伝子のプロモーター領域の上流に存在する100bp程の短い制御エレメントSAREを同定し、このゲノム配列がArcの活動依存的な発現に重要な役割を果たしていることを見いだした(Kawashima et al,PNAS,2009)。このエレメントを利用して蛍光タンパクや発光タンパクをレポーターとする活動依存的遺伝子発現プローブを作成し、動物個体の脳活動の検出に成功した(Kawashima et al,PNAS,2009)。
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