歯状核亦核淡蒼球ルイ体委稲症(以下DRPLA)はミオクローヌス発作、痴呆、協調連動の障害、不随運動を主徴とする常染色体優性遺伝病であり、日本人に好発し、脊髄小脳変性症の中では日本では比較的頻度の高い疾患である。疾患遺伝子産物であるDRPLAタンパクの機能解析をおこなう過程で、メチル化ヒストン結合タンパク質・WDR5と結合するデータが得られた。しかし、DRPLAタンパクがヒストンのメチル化修飾に影響を与えている明確なデータは現在までに得られていない。一方、GFP融合DRPLA遺伝子を定常発現する細胞株に、ヒストン脱アセチル化阻害剤(HDAC阻害剤)を導入すると、核全体に一様に局在するパターンを示していたGFP-DRPLAが、核内に複数個点在する局在変化を示す結果が得られた。また、過去にDRPLAタンパクと結合すると報告されているETO/MTG8を定常発現株にトランスフェクションするとETO/MTG8が導入された細胞のDRPLAタンパクは、核内に点在し、ETO/MTG8と共局在する変化が見られた。これは、HDAC阻害剤を導入した定常発現株のDRPLAタンパクが局在変化を示すパターンと酷似している。ETO/MTG8は転写調節因子とされ、単独で発現させると核全体に局在する。このことから、DRPLAタンパクはETO/MTG8の存在により、局在変化を起こすと思われる。さらに、HDAC3遺伝子を定常発現株に導入するとDRPLAタンパクの局在が変化するデータも得られた。
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