研究課題/領域番号 |
19500268
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 容子 関東学院大学, 人間環境学部, 教授 (70251501)
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研究分担者 |
佐藤 勝重 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 講師 (80291342)
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キーワード | depolarization wave / 光学計測 / 膜電位感受性色素 / ラット胚 / gap junction / 自発性興奮 / 呼吸中枢 / 神経回路網 |
研究概要 |
生命の維持に不可欠な中枢神経系の活動は、感覚性入力に加えて、神経細胞の自発興奮活動によって支えられている。この自発活動は、個体発生の非常に早い時期すでに、延髄、脊髄などで観察されることが知られている。従来、これらは、成体での呼吸リズム、歩行リズムなどに対応するembryonic prototypeであると考えられてきた。我々は、広範囲伝播脱分極波(depolarization wave)の研究の過程で、従来、延髄・脊髄などで別個の現象として解析が行われていた自発興奮活動が、実はひと続きの同一現象であり、しかも腰・仙髄の末端から大脳の一部にまでおよぶ、大興奮波のごく一部分を見ているのにすぎないということに気がついた。広範囲伝播波は成体ではみられず、このことから、脱分極波は発生のある一時期に一過性に出現し次第に消失していくものと考えられる。我々は一つの仮説として、"脱分極波の活動パターンが、呼吸中枢など成体でみられる自発性リズム活動の発現をコントロールしているのではないか"と考えた。本研究は、延髄に着目し、胎児性自発興奮波から成体呼吸リズム活動へのスイッチングがどのようなメカニズムでおこり、両者の間にどのような相互依存性があるのかを明らかにするために計画された。 本年度は、ラット胚を用い自発性脱分極波のoriginに関して解析を行った。まず、脳幹-脊髄標本を用い、自発性脱分極波のoriginを解析したところ、E15のラットでは、自発性脱分極波は頚髄から上部腰髄の多数の領域から起こったが、E16のratでは、ほとんどが腰仙髄から起こることが明らかとなった。また、脊髄を切り落とした脳幹標本では、脳幹内の焦点が活性化され、橋背内側、延髄背内側、延髄腹外側の領域から自発性脱分極波が起こることが明らかとなった。このことから、自発性脱分極波は、脊髄を中心とする中枢神経系の広い領域に分布する焦点から起こること、それらは自律分散システムとして発生期中枢神経系におけるcorrelated activityの発現維持に寄与していることが示唆された。
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