中枢神経系におけるプロテオームの多様性創出と部位特異的発現制御メカニズムの解明のために、モデル遺伝子としてFibroblast Growth Factor-Receptor2(FGFR2)遺伝子を用いて以下の解析を行った。FGFR2は選択的スプライシング制御により構造と機能を変えることが知られており、そのスプライシング・パターンの検討、スプライシング制御に関与するシス配列の同定、シス配列に結合するトランス因子(RNA結合タンパク質)の同定、スプライシング制御メカニズムと制御ルールの解明を行った。まずスプライシング・レポーターシステムの開発を行い、細胞およびマウス個体でこれを検証したところ、世界で初めて相互排他的選択的スプライシングをきれいに反映する実験系の開発に成功した。 このレポーター系を用いて、選択的スプライシング制御に働いている2つのシス・エレメント(UGCAUG配列およびISE/ISS-3配列)を同定できた。さらに、このシス・エレメントに結合するRNA結合タンパク質として、FoxおよびESRPを同定した。 この2つの因子がシス配列に結合することにより、選択されやすさに優劣のある2つの相互排他的エクソンの認識を制御して、スイッチを切り替えるように1つのエクソンのみの選択を可能にしていることを見出した。さらに、この2つのエクソンの制御は、進化的に保存されたメカニズムとして、全身性に発現するRNA結合タンパク質と組織特異的に発現するRNA結合タンパク質の組み合わせによりなされていることが分かり、スプライシング制御の暗号を解読する上で重要な発見となった。
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