XPAの神経細胞における機能を解析するために、子宮内エレクトロポレーション法を用いて、マウスXPA遺伝子をターゲットとしたshRNAiベクターをEGFP遺伝子とともに胎生期マウス大脳皮質に導入することによりXPAノックダウン神経細胞を可視化し、表現型の解析を行った。さらに、XPAノックアウトマウスの胎生期終脳における組織学的検討を行った。 1.XPAノックダウン神経細胞の大脳皮質法線方向における移動の解析 コントロールでは、多数のGFP陽性細胞が皮質板に到達しているのに対し、XPAをノックダウンしたものでは、ほとんどのGFP陽性細胞が皮質板の脳室側、特に中間帯に蓄積しているのが認められた。 2、XPAノックダウン神経細胞の細胞周期および分化に関する解析 XPAが神経前駆細胞の分裂に関与しているかどうか調べるため、分裂細胞のマーカーであるKi-67とM期のマーカーであるリン酸化ピストンH3に対する抗体を用いて、免疫組織染色を行った。中間帯に停止しているXPAノックダウン細胞のほとんどすべてがKi-67陽性であることが認められ、さらに、これらの細胞のほとんどすべてがリン酸化ヒストンH3陽性であることを見いだした。さらに、停止したノックダウン細胞はMAP2陰性であり、分化異常も引き起こすことが認められた。 3、XPAノックアウトマウスの大脳における組織学的検討 XPAノックアウトマウスがXPA患者の神経症状発症モデルになるかどうか検討するため、E17の大脳皮質において、発達段階である皮質板の厚さがXPAノックアウトマウスにおいて薄く、皮質板下部の細胞数が少ない事が観察されている。XPAノックダウン細胞の解析結果と考え合わせると、これらの組織学的異常は神経前駆細胞の移動あるいは後分裂細胞への移行の異常に起因するものかもしれないと推察された。 以上の結果より、XPAはDNA修復のみならず神経細胞の移動、分裂、分化に関与していることが示唆された。
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