研究概要 |
近年、RNAiと呼ばれる、二本鎖RNAを用いた、遺伝子発現抑制の方法が知られるようになってきている。この方法は、簡便で、効果的な遺伝子発現抑制の方法であるが、行動解析を行うようなvivoで二本鎖RNAを直接導入することは容易ではない。また学習のような長期間にわたる行動変化に対して遺伝子発現抑制を行うのに適している方法であるとは言い難い。 我々は、脳の高次機能の分子基盤を知るために、これらの問題を克服するシステムの構築を目指し、レンチウイルスを用いてshRNAの発現をvivoで行うことを試みた。 In vitroでドーパミン1,2型それぞれに効果のあった配列を組み込んだレンチベクターを作成し組み替えレンチウイルスを超遠心によって濃縮して得た。ウイルスのtiterを調べたところ、およそ10^<5〜6>PFUの感染効率を持っていることが確認された。このウイルス粒子をラット線条体に注入したところ、2週間の生存期間の後にはレポーター遺伝子であるGFPの抗体による抗体陽性細胞が注入部位周辺で確認され、感染させることが成功したことが確認された。 しかし、対照として別途入手した同じプロモーターを用いてGFPのみを発現するレンチウイルスを同様に注入したところ、GFPの直接の蛍光を観測することができ、自作したウイルスは感染させることはできたが、対照に用いたウイルスよりもかなりtiterの低いものであることが判明した。 このため、受容体の抑制効果が生じているのかいないのか、生じていないとするとその理由はvivoとvitroの違いによるものなのか、titerが低いためにRNAiの効率が悪いのか判定することが困難であり、さらにtiterを上げる条件を検索することが必要であることが判明した。
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