研究概要 |
近年、様々な研究によって神経幹細胞の維持・分化機構等の解明が進んでいるが、神経幹細胞の維持における生存機構についてはあまりよく分かっていない。いわゆる生存因子とされるものは同定されておらず、神経幹細胞の増殖を促進する成長因子である上皮成長因子(EGF),線維芽細胞成長因子(FGF),およびインスリン様成長因子(IGF)が結果的に生存・維持を促しているのではないかと考えられている。そこで、神経幹細胞の生存を促進する因子の探索を行った。 我々は、これまで、ストローマ細胞であるPA6細胞の培養上清(PA6CM)が、低細胞密度下での生存を促進するタンパク質を分泌しているこ,とを見出しており、そのタンパク質の精製を試みた。まず、硫安沈殿による粗分画を試みたところ、その生存因子活性は35%硫安で塩析されたことから、比較的分子量の大きなタンパク質であることが予想された。次にこの活性のレクチン各種(ConA,LCA,RCA,WGA)およびヘパリンアフィニティーカラムへの結合を調べたところ、ConA,LCA,およびWGAへの結合が確認され、複合糖鎖を有する糖タンパク質であることが示唆された。また、特にLCAアフィニティーカラムを用いることによって高純度な精製が可能であることも明らかとなった。さらに、各種イオン交換カラムクロマトグラフィーを試みたところ、SP-セファロースカラムにより高度な精製が可能であることも明らかとなった。
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