本研究の目的は小脳核抑制性シナプス伝達におけるセロトニンの発達過程での役割を解明することにあった。前年度の研究実績としてセロトニンがどのような修飾作用を示すかを明らかにしたので学術論文として報告した。それと同時に発達過程における小脳核抑制性シナプスの性質を精査して、次の作用が発達過程にあることが解った。 (1)GABA(A)受容体を介するシナプス応答は発達変化に伴い、そのシナプス電流のキネティクスが変化する。 (2)GABA放出抑制に関わる修飾作用は発達に伴い、セロトニン感受性が弱くなる。 (3)セロトニンによる小脳核主細胞を興奮させる作用は発達変化を示さない。 (1)について、薬理学、生化学的な実験を行った結果、GABA(A)受容体サブユニットの発現パターンの変化があることが明らかになった。(2)はシナプス終末の構造的・機能的な変化が関与している可能性を示す結果を得ている。生物物理学的検討を加えて詳細を明らかにする予定である。これら2つの事象がセロトニンを中心とした制御機構によって起こっているのかを調べるための発展的研究を現在検討中である。(3)に示したセロトニンによる興奮作用には過分極活性型陽イオンチャネルの活性化が関与することが解り、小脳からの情報の流れに重要な意味を持つと考えられる。以上のように発達過程における有意な変化が見いだされたことから、これらの結果をまとめて、現在学術論文に投稿準備中である。
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