2年目となる当該年度は、新規緑内障マウスモデルとしての視神経損傷モデルを作製し、これに初年度に作製したマウスES細胞由来網膜神経節前駆細胞の移植を試みた。 視神経は、網膜の最内層に存在する網膜神経節細胞の軸索の集合体である。網膜神経節細胞は、網膜の外層に存在する光受容体からの刺激を水平細胞を介して受け取り、その軸索は非常に長く伸長して神経束をつくり、これが視神経として眼球の後方から出て脳へと向かう。最終的には上丘に投射し視覚情報を伝達する。この視神経を損傷し新規に緑内障マウスモデルを作製するため、マウスの眼球後1mm部位の視神経を切子で10秒x5回つまんで圧迫した。作製した損傷の評価のため、損傷を加えていない正常の視神経および本法による損傷視神経の組織染色を施行したところ、損傷マウスの視神経(軸索)では圧迫部位を含みその前後の長範囲において通常発現しているNFMおよびMBPの発現が殆んど認められなくなり、逆に圧迫部位以外でGFAPの発現が亢進していることが分かった。また網膜の最内層に存在する網膜神経節細胞の細胞体数が減少した。損傷眼は瞳孔径が開大し、対抗反射も認められなくなった。以上より、本損傷法により順行性および逆行性に網膜神経節細胞の軸索変性が起こり、一部の細胞では細胞体の脱落も認め、視覚情報の伝達が障害されるモデルを作製することができた。 このマウスの網膜下に、分化誘導した網膜神経節前駆細胞を注入したところ、組織のHE染色およびpax6遺伝子の下流に導入したGFPの発現にて、移植した細胞が生着していることが観察された。現在のところ奇形腫の形成は認めていない。次年度以降は、この生着後の移植細胞の分化状態および機能について、免疫染色や電気生理学的検査にて評価していく予定である。
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