我々はこれまで、脳室帯で誕生した皮質神経細胞の大部分は脳室下帯(SVZ)に一過性に留まり多極性細胞になること、多極性細胞はさらに皮質板(CP)に入る前に放射状線維を足場として移動するロコモーション細胞へと形態変化することを観察してきた。しかし、移動過程で多極性細胞を経る必然性は不明であった。多極性細胞で機能する分子を探索するため、SVZに発現する受容体タンパク質のスクリーニングを行った。その結果、18種類の候補分子が得られ、この中にはRobo2などの複数の軸索ガイダンス分子が含まれていた。本年度は主にRobo2による移動制御、及び軸索伸展への役割を解析した。発現パターンの解析から、Robo2の役割として、多極性細胞の時期におけるCPへの侵入の阻止が考えられた。この仮説を検点を検討した。1)Robo2は多極性細胞において機能できる形で発現しているか?-ベクターを子宮内電気穿孔法により導入し、多極性細胞がGFPにより可視化された切片に対して、蛍光を用いた分解能の高いin situ hybridiationを行った。その結果、実際に多極性細胞にRobo2が発現していることが確認された。2)Robo2を阻害した場合にCPへの進入が早まるか?-上記の仮説が正しければ、Robo2を強制発現させた場合にはCPへの侵入が遅れ、阻害した場合には早まることが期待された。強制発現させた場合に、CPへの進入が遅れることはすでに確認されている。Robo2を阻害した場合の効果を検討するため、short hairpin RNA (shRNA)発現ベクターを子宮内電気穿孔法により導入し、Robo2のノックダウンを試みた。7種類の配列を試みた結果、予想に反して4種類のベクターで移動の遅れが確認された。この結果は、Robo2が実際に移動過程で移動神経細胞に内在的に働いていることを示唆している。
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