神経が損傷を受けると周囲環境を構成している各種のグリア細胞の反応が生じる。中でもミクログリアは傷害初期に活性化し、傷害部位に遊走し、傷害ニューロンに対してカバーリングや貪食、また種々のサイトカインや栄養因子の放出などを通じて神経細胞に傷害性にあるいは保護的に働く。こうした現象には、おそらくある種のケモカインや、細胞接着因子などの関与が考えられている。なかでも、最近各種の炎症性疾患での関与が明らかとなってきたフラクタルカインCX3CL1は細胞接着とケモカインの2つの活性を併せ持ち、CNSでは神経細胞に発現することが知られる細胞膜結合型ケモカインで、一方、その受容体であるCX3CR1はミクログリアで発現することがわかっている。in vitroではCX3CL1は神経細胞の生存促進、ミクログリアのアポトーシスの抑制、CX3CR1欠損マウスでは、ミクログリアの反応調節ができず、その結果として、neurotoxicに働くことなどが明らかにされている。またCX3CR1欠損マウスにパーキンソン病やALSを作製すると、より神経細胞の脱落消失が認められることなどが近年報告され、CX3CR1の神経細胞保護効果が示唆されている。そこで我々は、CX3CR1欠損マウスを用い、中大脳動脈結紮モデルを作製し脳梗塞時におけるミクログリアの発現動態と神経細胞への影響についてミクログリアマーカーである1ba-1抗体を用い、免疫組織学的に経時的に検索した。その結果、CX3CR1欠損マウスでは梗塞後、1日で壊死巣周囲を含む傷害側の脳に大脳皮質から線条体にかけて高度瀰漫性に活性化ミクログリアの浸潤が認められ、その程度は3、5、7日と数は増加し、染色性もまし、傷害が持続化されている点が示唆された。
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