研究概要 |
中枢神経系の種々の傷害では神経細胞とそれらを取り巻くグリア細胞間にポジテイブ、あるいはネガテイブな反応動態が生じ、傷害を受けた神経細胞に対して、各種グリア細胞の動態はレスキュー、あるいはさらなる増悪に働くことが知られている。中でもミクログリアはIL1-beta, TNFαなどの炎症性サイトカイン、glutamate, nitric oxide, free radicalなどの産生によるニューロンへの障害作用、貪食細胞としての役割が重要視されているが、一方で、IL6, IL10など神経保護効果を有するサイトカインを分泌するという2面性を有し、ニューロン保護効果の側面も併せ持つことが知られている。近年、神経因性疼痛の発現にこのミクログリアの関与が報告され、発現を誘導する分子の研究が進んできている。そこで、末梢神経損傷による神経因性疼痛モデルを用い脊髄でのミクログリアの発現について免疫組織学的に検索した。神経因性疼痛モデルマウスの脊髄ではミクログリアは、後角の2-3層を中心に内側から外側にかけてほぼ全体にわたって認められ、その出現は傷害軸索の有無にかかわらず、2-3層にかけて広く浸潤することが確認された。これらミクログリアの発現と疼痛の発現には様々なサイトカインやレセプターの関与が想定されており、特にP2X4,P2Y12などATPレセプターやフラクタルカイン(CX3CL1)、フラクタルカインレセプター(CX3CR1)など研究が進んできている。そこで、CX3CR1のミクログリア誘導と遊走への関与を調べる目的で、今回CX3CR1ノックアウトマウス(KO)とワイルドマウス(WT)で神経因性疼痛モデルを作成し、免疫組織学的に検索したところ、KO群でもWTとほぼ同様のミクログリアの浸潤が認められ、CX3CR1そのものはミクログリアの浸潤誘導を完全には抑制しないことが示された。
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