研究概要 |
哺乳類が持つ高い学習能力の基盤は大脳新皮質にある。そして大脳新皮質の機能はその6層構造に依存している。層構造の本質とは、一体何なのか?この疑問を解明する鍵として層特異的遺伝子を使った興奮性ニューロンの分類と特徴付けを試み、以下の結果を得た。 1)ラットにおいて層特異的発現を示すR0Rbeta,ER81,Nurr1遺伝子は、領野特異的パターンを同時に示す。主成分解析から、それぞれの発現パターンは、「一次感覚野-連合野」「頭頂領域-側頭領域」という軸に沿った発現分布を示すことが分かった。このことは、この二つの要因が皮質形成の鍵である可能性を示している。 2)マウス・ラットにおいてCCKとPCP4遺伝子は、特定の興奮ニューロンサブタイプを規定するマーカーとして有用であることが分かった。両者は、6層においては、ほぼ相補的な分布を示す。逆行性トレーサーを使った実験により、これら2遺伝子の発現はそれぞれ皮質投射、視床投射と高い相関を示すことが分かった。従って、皮質でのその遺伝子発現分布(Gene expression landscape)は、皮質6層の投射構築を反映するものと考えられる。CCKはサルでも皮質投射との相関を示したが、PCP4は、一次視覚野以外では6層の発現は見られなかった。このような大きな種差は、皮質と視床の関係がネズミとサルで変化している可能性を示している。 3)Nurr1遺伝子は、非常に特徴的な散発的な発現を示すが、Nurr1陽性細胞で特異的に発現する一連の遺伝子が存在することが分かった。子宮内エレクトロポレーション法によってNurr1遺伝子を強制発現すると、一部の遺伝子発現に影響が見られた。
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