研究概要 |
申請者が見出した接着蛋白RA17/SynCAM(Cadm1)(Fujita et al.,1998,2002.2004,2006;Urase et al.2001)は機能シナプス形成に関与する(Biederer et al.,Science,2002)。シナプス前膜ではNeurexinと同様Cadm1のC末端のPDZ結合領域でCASKと結合し、シナプト小胞の前膜へのドッキングを促進し、神経伝達物質の開放を誘導する。しかし、Cadm1の後膜における機能シナプス形成の機構は不明である。本研究では後膜でCadm1と結合する蛋白を解析するとともに、機能シナプス形成の機構の解明を目的とし,酵母Two-hybrid,Pull-down Assay,免疫染色による解析をおこなった。以下のことが明らかになった。 1)Cadm1はニューロリギンと異なり、極性蛋白Par-3と結合した(Fujita et al.,2007)。 2)Cadm1はニュロリギンと異なりγ-Syntrophinに結合しなかった(論文投稿中) 3)シナプス結合してない過剰なCadm1はDendrites上でADAMファミリーにより切断され、特異的なシナプス形成のみが維持されることが明らかになった(Tanabe et al.,2008)。 4)自閉症の患者のCADM1遺伝子にH246NとY251S変異を発見した。この変異CADM1は正常CADM1に比べ、切断されやすく、小胞体に滞留し、細胞膜への輸送が阻害されていた。 今後、変異CADM1による興奮性抑制性シナプス形成障害が自閉症の病態とどのように関係するかを解析することが自閉症の原因究明に重要と思われる。
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