研究概要 |
最終年にあたり,昨年から引き続き,ゲルストマン-ストロイスラー症候群のプリオン遺伝子タンパク(PrP)のA117V変異の症例に関して検討した.この変異は,現在までに7家系が報告されており,その1家系でインディアナ大学で保存されている症例を検討している.臨床経過,症候は昨年の報告書に記載した.神経病理学的に特徴的なことは,大脳皮質では,アミロイドコアを欠き,円形でかつ,びまん性にPrP免疫染色で陽性を呈する斑を認めることであった.また,大脳基底核,海馬において,びまん性に境界不明瞭にPrP陽性の沈着を認めた.一方,一部の大脳皮質では,1つから多数のアミロイドコアを有し,GSSに典型的に認められるPrP陽性のプラークも認めた.このタイプのプラーク自体は,アミロイドベータやタウタンパクに対する抗体で認識される構造物を有しなかった.小脳皮質では,PrP陽性のコアのみを認めることが多かった.上記典型的なプラークに対して,PrPの90-102,95-108,109-122(3F4),151-165,220-231をそれぞれ認識する抗体を用いて組織学的に検討した.その結果,コア周囲のPrP沈着はすべての抗体で認識されたが,コアに関しては,90-102,109-122に対する抗体で強く認識された.A117VにおけるPrPはN末,C末ともにtruncatedされていることが知られているが,病理学的に認められるプラークにおいても,PrPの性状が異なる可能性が示唆された.
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