本研究は、非侵襲的な脳皮質の刺激方法である経頭蓋磁気刺激(Transcranial magnetic stimulation)を用いて、皮質拡散抑制(Spreading Depression:SD)を生じさせ虚血耐性を獲得することを目的とている。平成19年度に予備実験として確立したSDの測定系を用いて実験を行った。磁気刺激には小動物用の小径2.5cmの8字型コイルを用いた。これまで報告のある連続磁気刺激でコイルの刺激方向(0-90度)、周波数(10-30Hz)、刺激強度(10-90%)を変化させて実験を施行したがSDの導出は認められなかった。この刺激はbiphasic patternであるために、SDが起きない可能性が考えられた。そこでより強い皮質興奮性の変化が得られると近年報告されているmonophasic patternの、二連発連続磁気刺激が可能な磁気刺激装置に変更した。Magstim200、Bistimモジュールを用いてinter-stimulus interval 2msecにて二連発連続磁気刺激を施行した。コイルの角度は45度として、90%MTにて140pluseと120%MTにて240pluseの刺激を施行したがSDは導出できなかった。磁気刺激では刺激の限局性や体積導体モデルの問題からSDが生じにくい可能性も考察された。今後は近年報告のあるtheta burst磁気刺激や四連発連続磁気刺激を試みると共に、SDの導出にこだわらずに、TMSIによる虚血耐性の獲得を目指す研究の必要性も検討している。
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