研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis;ALS)は、大脳皮質運動野の第一次運動ニューロンと脳幹、脊髄の第二次運動ニューロンが選択的かつ進行的に変性・脱落する原因不明の神経変性疾患である。2-3年の経過で四肢や顔面、舌などの筋肉の萎縮と筋力低下が進行し、人工呼吸器を用いなければ呼吸筋の麻痺により2-4年で死亡すると言われている。その病因論については、現在まで幾つかの仮説(例えば、フリーラジカル説、興奮性アミノ酸説、免疫異常説等)が提唱されているが、未だその詳細は明らかになっていない。 そこで、本研究ではALSの病因の解明、治療法の開発を目指し、大規模ゲノム関連解析による未知のALS感受性遺伝子の単離・同定を試みた。本年度は、特にALS候補SNPを絞り込むためのゲノムスクリーニングを重点的に行った。 まず、ALS94症例と日本人一般集団由来のDNAを用い、ヒトゲノムに散在する50,268ヶ所の一塩基多型(SNP)について、マルチプレックスPCR-インベーダー法により相関解析を行った。さらに、サンプル数を増やして解析を行い、最終的に有意な相関を認める複数のSNP同定した(P<0.00001)。 絞り込まれた候補SNP領域については、ハップマップデータよりタグSNPを選別して、相関解析を行いながら、遺伝子地図を基にした高精度SNP地図、連鎖不平衡地図を構築している。現在までに、それぞれの候補遺伝子領域について、遺伝統計学的解析によりランドマークSNPよりも一層疾患と有意な相関を示す複数のSNPを見いだした。今後は、解析が終了していない遺伝子領域の構造解析、並びに疾患候補SNPについて、どのSNPが真の疾患感受性SNPを見極めるために機能解析を行う。
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