研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis;ALS)の発症機構を解明し、新たな治療法や治療薬の情報基盤を構築する。 平成20年においても、昨年度同様、大規模ゲノム関連解析(ゲノムスクリーニング)を重点的に行った。本年度は検体数を増やしてさらに詳細に解析した。ALS検体はバイオバンクジャパンに登録された約700例のDNA、コントロールDNAは日本人一般集団由来の約2,000例を用いて関連解析を行った。Single nucleotide polymorphism(SNP)マーカーには日本人標準多型データーベースに登録されているものを使用した。SNPのタイピングはマルチプレックスPCR-インベーダー法を用い、全ゲノムを段階的にスクリーニングした。第1次スクリーニングはALS92例とコントロール239例(1stセット)を用いて52,608SNPsを解析した。ここでP<0.01を示したSNPsについてALS約450例、コントロール965例(2ndセット)をタイピングした。更に段階的スクリーニングで用いなかった検体と対照を用いて関連解析を行った。結局、ゲノムスクリーニングで用いた検体とは重複しない、独立の検体を用いた二度の追試の結果、遺伝学的に有意な相関を示すSNPを同定した。その有意な相関を持つSNPは機能未知の遺伝子のイントロン12に存在していた。当該SNPを含む領域について連鎖不平衡マッピングを行い、候補遺伝子領域を約100kbに限局した。その領域には5つの遺伝子がマップされていた。次いで候補領域から未知のSNPを単離するために48サンプルを用いて、候補領域に含まれる5遺伝子座について再シークエンスを行い、詳細なSNP地図を構築した。本研究は、以上のようにSNPを用いた大規模ゲノム関連解析により、ALS感受性候補遺伝子領域を同定した本邦初の報告である。
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