研究課題
神経変性疾患のうちタウ蛋白の異常蓄積を病理的特徴とする疾患はクウオパチーと呼ばれ、この中には最大の神経変性疾患であるアルツハイマー病も含まれる。タウ蛋白異常蓄積は単なる病理的なマーカーとしての副次的なものではなく、神経変性の病態機序そのものに深く関係していることが明らかになっているが、その異常蓄積自体が神経障害を生じるのかあるいは、あるいは他の機序により神経障害を生じているのかは明らかではない。そこでわれわれはP301S遺伝子変異をもつヒトタウ遺伝子を導入したタウオパチーのマウスモデルを作成し、出生から連続的に病理的変化や生化学的変化を詳細に検討することにより、タウ蛋白異常と神経変性にいたる機序の解明をめざした。作成したモデルマウスは生後6か月以降、神経原線維変化を生じ、神経細胞の減少、脳の萎縮を生じ、タウオパチーの病像を再現した。興味深いことにタウ蛋白の異常蓄積が細胞内に確認される以前からマイクログリアの活性化を認め、同時期からシナプスの変性を来すことがわかった。さらに、マイクログリアの活性化を抑制する目的で免疫抑制剤を投与したところ、マイクログリアの活性化の抑制のみならず、タウ病理の改善、神経変性の減少が認められ、炎症機序がタウオパチーにおいて重要な役割を演じていることがわかった。このことは、神経変性疾患の治療を考える上で、炎症性機序の重要性を指摘するのみではなく、新たな治療戦略を提供するものである。
すべて 2008
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