NMDA受容体によるスパインの形態の制御は記憶・学習などの脳高次機能に重要であると考えられている。近年、NMDA受容体に会合するRhoGAP、及びRhoGEFがわずかではあるが同定されてきているが、それら分子とNMDA受容体との機能的相関は不明であり、NMDA受容体によるアクチン細胞骨格の制御機構(Rhoファミリー低分子量G蛋白質の制御機構)は不明な点が多い。19年度の研究ではNMDA受容体に会合するRhoGAPであるp250GAPの機能解析を行い、以下の結果を得た。(1)レンチウイルスを用いたRNAiノックダウンによりp250GAPの発現を低下させたneuronではspineの幅の増大が観察された。(2)シンドビスウイルスを用いてp250GAPを過剰発現させたneuronではsphineの形状が細長くなるなどの異常が観察された。(3)NMDA受容体刺激によるRhoAの活性化にp250GAPは必須な役割を果たしていることを明らかにした。(4)NMDA受容体刺激によってp250GAPの細胞内局在が調節されていることを明らかにした。本年度の研究より、機能未知な部分が多いp250GAPが、NMDA受容体を介したRhoA/spine形態の制御に重要な役割を担っていることが明らかになった。
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