NMDA受容体によるスパインの形態の制御は記憶・学習などの脳高次機能に重要であると考えられている。近年、NMDA受容体に会合するRhoGAP、及びRhoGEFがわずかではあるが同定されてきているが、それら分子とNMDA受容体との機能的相関は不明であり、NMDA受容体によるアクチン細胞骨格の制御機構(Rhoファミリー低分子量G蛋白質の制御機構)は不明な点が多い。20年度の研究では、新規RhoGAPであるTCGAPの機能解析や遺伝子欠損マウスの作製を行い、以下の結果を得た。 (1)TCGAP欠損マウスを作製した。 (2)AdenovirusによってTCGAPをneuronに過剰発現させることによって神経細胞の形態に異常が見られたことから、TCGAPはNMDA受容体の下流で神経細胞の形態を制御している可能性が示唆された。 (3)HEK293T細胞でもTCGAPを過剰に発現させることによってactin細胞骨格や細胞の形態に異常が見られた。 (4)TCGAPに会合する分子をyeast-two hybrid法により検索した結果、actin細胞骨格を制御することが知られている分子が多数同定された。 以上の結果から、TCGAPはアクチン細胞骨格を制御することによって、神経細胞の形態を制御していることが示唆された。
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