前年度、新規に同定したエキソン4のみから成るGDNF mRNAおよび各種の変異GDNF発現コンストラクトを作製し、ラットC6グリオーマ細胞に一過性に遺伝子導入してGDNFの細胞内での糖鎖付加やプロセシングなどの翻訳後修飾および各種刺激によるGDNFの培地中への分泌についてウェスタンブロット法を用いて解析した。その結果、新規GDNF mRNA由来のタンパク分子は糖鎖付加されず、細胞外に分泌されないことが明らかとなった。一方、エキソン3とエキソン4より前駆体型として産生されるGDNFは、成熟型ではfurin様プロテアーゼのプロセシングにより取除かれるプロドメインおよびC末端の2つのCys残基がGDNFの分泌に重要な役割を果たしていること、furin様プオテアーゼプロセシング配列に変異を入れると前駆体GDNFが分泌されることなどが明らかとなった。また、野生型GDNFについては、細胞中には前駆体型GDNFが大勢を占めること、培地中には3種類分子量の異なる分泌型GDNFが存在することから、分泌過程あるいは分泌後にfurin依存・非依存的にプロセシングされることが示唆された。次に、GDNFの小胞体・ゴルジ体間の輸送過程を解析する目的で、C6細胞を用いて恒常的GDNF高発現細胞株を作製し、翻訳後修飾から分泌までの過程について検討を加えた。その結果、GDNFのN-glycosylationは細胞内輸送過程に必須であること、GDNFの分泌には細胞内Ca^<2+>の上昇、プロテインキナーゼC(PKC)の活性化が重要な役割を果たしていることが示唆された。以上の結果から、新規GDNF mRNAの翻訳産物はこれまで知られている神経栄養因子としてのGDNF以外の性質を有する可能性があること、PKCシグナリング系の賦活化が成熟型GDNFの分泌を促進することなど、GDNFに関する新たな知見を得ることができた。
|