研究課題
1) 神経幹細胞(NSCs)の分化誘導に及ぼす多価不飽和脂肪酸の影響[実験方法]ラット胎児脳からNSCsを単離し、bFGF非存在下で培地にドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、およびアラキドン酸(ARA)を添加し(各1μM)培養を行い、添加後2、4、7日目のニューロンとアストロサイトへの分化率を算出した。[結果・考察]i)NSCsからニューロンへの分化率は、DHA添加後の2日目と7日目で有意に増加し、EPAでは、7日目に有意に増加した。一方、ARA添加による影響は認められなかった。ii)アストロサイトへの分化率は、有意差は認められなかったが、DHAとEPA添加により減少する傾向がみられた。これらの結果からDHAとEPAはNSCsのneurogenesisを促進することが見出された。2) DHA、EPAによるneurogenesis促進機序の解明[実験方法]DHAとEPAを添加6、12、24、96時間後にNSCsからtotal RNAを精製し、RT-PCR法によりmRMA発現量を定量した。測定因子:NSCsの増殖・分化を調節することが知られている塩基性ヘリックスループヘリックス(bHLH)転写因子(neurogenin1、NeuroD、Hes1)と、ニューロン特異的なこれら転写因子の標的遺伝子であるMAP2[結果・考察]i)DHA添加24、48時間後、分化抑制性転写因子であるHes1発現量は有意に低下し、一方、分化促進性転写因子であるNeuroD発現量は有意に増加した。ii)EPA添加では、96時間後のNeuroDおよびMAP2の発現量が有意に増加した。1)、2)の結果から、DHAやEPAがbHLH転写因子の発現量を変化させ、NSCsのneurogenesisを促進することが見出された。
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