研究課題
1)成体脳由来神経幹細胞(NSCs)の培養法の確立と分化誘導に及ぼす多価不飽和脂肪酸の影響1)-1)成体脳NSCsの培養法の確立[実験方法]10週齢の雌性ラットを麻酔下で氷冷した生理食塩液を還流したのち脳を摘出して左右海馬を単離した。単離した海馬を細かく刻み、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼを含むリン酸緩衝液に入れ37℃で10分間加温した。ピペッティングにより組織を懸濁後、トリプシンを加えさらに37℃で10分間加温した後、遠心により得られた沈殿をN2培地で懸濁した。懸濁後、細胞数を計数し、1x10^5個/mLの濃度でEGFとbFGFを添加したN2培地で培養した。[結果]7日間培養すると、胎児脳由来NSCsの場合と同様に、ニューロスフェアとよばれる神経幹細胞塊が得られた。得られた神経幹細胞のほとんどは、神経幹細胞マーカーのnestinおよびprominin陽性細胞であった。1)-2)NSCsの分化誘導にたいする各種脂肪酸の影響[実験方法]得られたニューロスフェアを分散後24-ウエルプレートに各ウエル2x10^5個の細胞を幡種した。培地には成長因子を添加せず、0.01%BSA中に懸濁したDHAを添加した。対照群には0.01%BSAを添加し7日間培養した。[結果・考察]i)DHAの添加によりTuj-1陽性細胞が増加した。ii全細胞数(PI数)に対するTuj-1(ニューロン)陽性細胞数の割合はニューロンへの分化率し、コントロールと比較してDHAの添加により約40%Tuj-1陽性細胞数の割合が増加した。i)、ii)の結果から、DHAは成体海馬由来神経幹細胞に対してもニューロンへの分化を促進する作用があることが明らかとなった。平成21年度はこの系を用いてDHA以外の脂肪酸の成体海馬由来神経幹細胞に対する影響について検討する。
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