研究課題
ガス分子を生成する酵素系や受容系の多くは、他のガス生成反応と拮抗あるいは共役している例が多数存在するにもかかわらず、その生物学的・病態生理学的意義の探究はほとんどなされていない。本研究の目的は、中枢神経系(CNS)で産生される低分子ガス状メディエータの生成・受容機構を探究し、ガス分子による脳局所血流調節のメカニズムを解明することである。最近NOやCOのみならず、生体内でcysteineの分解にともなって生成される硫化水素(H_2S)が神経伝達や血管弛緩に関わる新しい分子として注目されている。そこでsGCやNOS以外のCOの標的分子の候補蛋白としてH_2S産生酵素であるcystathionine β-synthase (CBS)に着目し、ガス状メディエータを介した情報伝達制御機構の解明を目指した。第一に、肝組織のメタボローム解析の結果から-酸化炭素(CO)がtranssulfuration pathwayを抑制することに着目し、この代謝系の律速酵素であるCBSの活性がCOにより阻害され、NOでは阻害されないCO特異的な受容体であることを見出した(Shintani et al., Hepatology,2009)。第二に、full lengthのラットCBS遺伝子を大腸菌に発現・精製し、可視分光スペクトルによるヘム軸配位子の解析を行ったところ、ヘムの2つの軸配位子のうちcysteine残基がCOと置換することが酵素反応を阻害するメカニズムであることを突き止めた。さらにCBSのN末端のヘム鉄のredox stateをH_2Sが還元型にシフトさせることにより、COによる当該酵素の阻害効果を増強するしくみがあることの証左を得た(lwabuchi et al.投稿準備中)。興味深いことに、小脳組織ではCBSがグリア細胞に、またCO産生酵素であるheme oxygenase (HO)-2がニューロンに、いずれも高発現していることが確認できた。
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Hepatology 292
ページ: 141-150
Advances in Experimental Medicine and Biology (In press)
Microvascular Reviews and Communications 2
ページ: 8-12