研究課題
ノシセプチンは、学習・記憶機能に対し抑制的な役割をしているというこれまでの数多くの研究報告とは逆に、我々は、学習・記憶機能を障害する用量より低い用量のノシセプチンにより、薬物によって引き起こされる学習・記憶障害が改善できることを報告してきた。この改善作用に係わる分子機序を明らかにすることを目的に、記憶機能に重要な細胞内情報伝達系である、extracellular signal-regulated kinase(ERK)をリン酸化するmitogen extracellular regulating kinase(MEK)経路およびprotein kinase A(PKA)経路に焦点をあて研究を進めた。ノシセプチンの海馬内投与によりMEK阻害薬、U0126による記憶障害が改善されたのに対して、PKA阻害薬、Rp-cAMPSによる記憶障害は改善されなかった。またこれら記憶障害に対して、ホスホジエステラーゼ阻害薬、ロリプラムもノシセプチンと同様の作用を示した。U0126投与による受動的回避学習試験の訓練試行後のERKのリン酸化の抑制に対してノシセプチンを併用投与しても影響がなかったことから、ノシセプチンはcAMP/PKA経路を介して記憶障害を改善している可能性が示唆された。またNOP受容体欠損マウスにおいても、ノシセプチンを併用投与することによりMEK阻害薬による記憶障害は改善されたことから、ノシセプチン投与による記憶障害改善作用はNOP受容体を介さない作用であることが強く示唆された。ノシセプチンのC末端側フラグメント、ノシセプチン(14-17)を併用投与することにより、U0126による記憶障害が改善された。以上より、ノシセプチンまたは生体内で代謝されたC末端側のフラグメントが海馬においてNOP受容体を介さずに記憶障害を改善している可能性が示唆された。
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