研究課題/領域番号 |
19500334
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
笹岡 俊邦 基礎生物学研究所, 神経生化学研究室, 准教授 (50222005)
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研究分担者 |
佐藤 朝子 基礎生物学研究所, 神経生化学研究室, 特別協力研究員 (10465932)
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キーワード | 神経科学 / 遺伝子 / 神経伝達物質と受容体 / マウス / 運動 / 遺伝子操作マウス / テトラサイクリン |
研究概要 |
ドーパミンは中枢神経の神経伝達物質で、運動制御、情動、報酬系などに重要な役割を持つ。また、パーキンソン病や統合失調症などの疾患ではドーパミンの働きの低下/過剰の関与が考えられている。本研究はドーパミン受容体の主要分子であるD1受容体(D1R)およびD2受容体(D2R)を介する情報伝達に着目し、運動の制御機構の解明、さらに運動障害を示す疾患であるパーキンソン病の病態機構解明を目指す。 D1RおよびD2Rの両方を欠損するマウスを作製すると、生後8日目より急速に運動量が低下し、摂食がなく、成熟前に死亡する。このことは、運動制御と摂食行動にD1RとD2R両方のシグナルの関与を示唆している。ドーパミンの機能をドーパミン受容体の観点から検討するため、D1R/D2R二重欠損の遺伝背景に、テトラサイクリンで発現制御可能なD1R遺伝子を持つトランスジェニックマウスを作製した。このマウスは、導入されたD1Rの発現により、D1R/D2R二重欠損マウスの発達期の運動異常・摂食異常・致死性を回避でき、ドキシサイクリン(DOX)を投与すると、D1R発現が低下しD1R/D2R二重欠損状態となり、DOX投与を停止するとD1R発現が回復することから、D1R発現量変化と行動変化の観察が可能である。このマウスの運動量とD1R発現量を解析したところ、DOX投与後、D1R発現量低下と運動量低下を示し、動作の緩慢や姿勢異常等のパーキンソン病類似の運動異常が見られた。DOX投与を停止すると、3日後にDOX投与前の10倍以上の運動過剰の状態を示し、約7日後にはDOX投与前の運動量に回復した。D1R発現量はDOX投与中止後3日目では、約20%程度まで回復していたが、DOX投与前の発現量まで回復するのは、DOX投与中止後7日目以降であった。このことからD1R発現量と運動量は単に線型な関係ではなく、D1R発現量の変化により運動量を制御する新しい仕組みがあることが示唆された。今後、D1Rの標的分子と運動制御の仕組みを明らかにする予定である。
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