発生段階の軸索突起の先端部(成長円錐)は、細胞外環境に存在するガイダンス因子を認識して伸長方向を転換する。多くのガイダンス因子は細胞質Ca^<2+>シグナルを介して成長円錐の旋回運動を誘起するが、小胞体(細胞内Ca^<2+>ストア)からのCa^<2+>放出を伴わないCa^<2+>シグナルは成長円錐を反対側に旋回させることが知られている(反発性ガイダンス)。本研究代表者の過去の研究成果は、成長円錐での非対称性エンドサイトーシスが反発性ガイダンスを駆動することを示唆したため、平成20年度には、旋回過程の成長円錐でのエンドサイトーシスの可視化解析を試みた。異なる蛍光波長特性をもつ蛍光蛋白質を付加したクラスリンおよびダイナミンの挙動をエバネッセント顕微鏡で観察することにより、成長円錐でのクラスリン依存性エンドサイトーシスをリアルタイムで可視化することに成功した。本法を用いて旋回中の成長円錐でのエンドサイトーシスの非対称性を定量したところ、成長円錐片側の反発性Ca^<2+>シグナルはエンドサイトーシスを非対称化するが、誘引性Ca^<2+>シグナルはエンドサイトーシスには影響をおよぼさないことが判明した。この実験結果は本研究代表者の仮説を支持するものであり、クラスリン依存性エンドサイトーシスによる成長円錐形質膜の非対称性除去が反発性ガイダンスを駆動することが明らかになった(未発表)。さらに、一酸化窒素とサイクリックグアノシン-リン酸(cGMP)が反発性軸索ガイダンスを担う細胞内情報伝達系として重要な役割を担うことを発見し、国際的な学術誌に論文を投稿した。
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