研究概要 |
コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CS-PG)は、成長因子、ケモカイン、細胞外基質分子等、様々な蛋白質とCS糖鎖構造依存的に結合し、その機能調節に重要な役割を果たしている。我々はこれまで、CS特異構造の中でも、特に、多硫酸化構造と呼ばれるD構造(GlcA(2S)β1-3GalNAc(6S))及びE構造(GlcAβ1-3GalNAc(4,6-diS))の機能の解明を目指して、研究を進めてきた。今回、各々、D構造およびE構造の生成に寄与する硫酸転移酵素、USTおよび4,6-STのノックダウンにより、大脳の発達過程におけるこれらの構造単位の機能を明らかにすることを試みた。 マウス子宮内胎仔電気穿孔法を用いて、これらの酵素をノックダウンすると、大脳皮質神経細胞の細胞移動が顕著に阻害され、脳室下帯から中間帯下部に神経細胞が滞留した。滞留している細胞は多極性の形態を示しており、神経細胞の多極性移動から放射状移動段階への変化が阻害されているものと考えられる。さらに、海馬神経細胞をコンドロイチナーゼABC存在下で分散培養すると、複数の軸索を有する多極性の細胞が有意に増加することが明らかになった。同様の現象は、USTおよび4,6-STをノックダウンした場合にも観察されることから、CS多硫酸化構造の機能消失によると考えられる。これらの細胞は、突起の伸展と退縮を激しく繰り返しており、形態的に極めて不安定であることがライブイメージングによって観察された。以上の結果は、CS多硫酸化構造が神経細胞の極性変化とそれに伴う細胞形態の安定化に重要な役割を果たしていることを示している。
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