研究概要 |
本研究では、急速凍結ディープエッチング法を駆使して、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jacobdisease(CJD)の感染機構の中心となる細胞内の局所場を解明することを目的とする。CJDの感染機構としては、プルシナーによる「タンパク質仮説」(Prusiner, et. al.,1998)が有力視されているが、この実態は解明されていない。この仮説の最大の問題点のひとつは、「PrP^cからPrP^<Sc>への構造変換機構」が明確でないことにある。この構造変換の場を捉えることが最初の大きな成果になると考えられる。 本研究では、特に、CJDの診断マーカーである「14-3-3タンパク質」に着日して、神経幹細胞でのタンパク質複合体の形成・解離機構について検討する。最終的には、電子線構造解析を基盤として、CJD関連蛋白質分子の細胞内動態、濃縮、複合体形成・解離の意義について理解することを目的とする。 本年度は以下のような研究をおこない、新しい知見を得た。電子線構造解析の試料調製には、タンパク質の細胞内動態をライブに近い時間分解能で捉えると考えられる「液化ヘリウム冷却仕様の金属圧着法」による急速凍結を利用した。凍結置換固定後に、水溶性樹脂で包埋・重合して、その超薄切片に対して免疫金コロイド染色を行い、14-3-3タンパク質の局在を検討した。14-3-3タンパク質は、細胞膜や細胞辺縁部よりも、細胞質内部に形成された内膜系の膜構造や細胞骨格系のフィラメント構造に局在していることがわかった。そこでは、複数種のタンパク質と複合化すること、これらのタンパク質複合体形成には、ある程度の膜中コレステロール濃度やアクチンフィラメントの重合度が必要であることがわかってきた。
|