遺伝性の末梢神経変性症の50%を占めると言われるIA型CMT病はPMP22という四回膜貫通型構造を有する蛋白をコードする遺伝子の点変異、増幅、または欠損により生じる。PMP22は末梢ミエリンの膜蛋白のおよそ1%を占めるにすぎないが、PMP22がIA型CMT病の原因となるのは、膜表面での局在とその厳密な発現量の調節が成然した末梢ミエリンの維持に重要であることを表している。本年度は、PMP22遺伝子の膜貫通領域にIA型CMT病と同一の点変異をもつ典型的な自然発症型の病態モデルマウス(トランベラーやトランベラーJ)由来のシュワン細胞を用い、病態シグナルに関与する候補分子を明らかにすることを試みた。まずその共培養系の確立に関してであるが、グリア・ニューロンとも単離する胎生時期をあわせることで、病態系の共培養系を再現することができた。しかし、これに関してはさらなる再現性の向上とスクリーニング数の上昇に関与するまだ改良め余地が多く残されている。しかし、現在の確立しつある系を用いて当研究室にある低分子化合物ライブラリーから改善物質のスクりーニングをはじめているところである。その結果、低分子量化合物に関しては、MAPキナーゼ系の阻害物質や低分子量GTP結合蛋白質シグナル伝達経路を阻害する物質が有効な改善効果を示した。また、二次スクりーニングとして情報伝達分子によりターゲットを絞れるsiRNAを用いた。先のスクリーニングとこのスクリーニングで共通した標的分子が病態発症に関与するシグナル伝達に含まれている可能性が高い。現在スクリーニング継続中である。
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