1.in vivoアンケイジングによる局所グルタミン酸投与方法の開発 (1)急性投与法の開発 我々は、生体による拍動を抑制しつつケイジドグルタミン酸を脳内に浸透させることをカバーガラスと低融点アガロースにより達成した。ケイジドグルタミン酸より分子量の大きい蛍光色素を用いて脳内への浸透を調べたところ、表面から100ミクロンの深さにおいても20分で濃度平衡に達することがわかった。 (2)慢性投与用デバイスの開発 東京大学工学部一木研究室との共同研究により、ケイジドグルタミン酸を任意に投与できる長期観察用マイクロデバイスの試作品が完成した。しかし、実際に装着してみると、落下菌等によると思われる炎症反応により脳表面の細胞が観察不能になった。そこで、炎症反応を抑制するために抗生物質の選択や手術器具滅菌方法の検討、落下菌を防ぐためのクリーンフード製作などを行った。その結果ガラス板を脳にはめ込んだ場合の炎症の生じる確率は40%程度まで低減させることができた。 2.ケイジドグルタミン酸のin vivoアンケイジングの応用 (1)in vivoマッピング 上記で開発した方法を用いて、大脳皮質1層の樹状突起スパイン体積と機能的なグルタミン酸受容体の分布を調べたところそれらの相関は非常に高かった(r=0.88)。この方法により、in vivo成体大脳皮質においてもシナプスの重みの評価がスパインの形態を調べることによって簡便に予測可能であることを初めて示すことができた。 (2)in vivo可塑性誘導 in vivo大脳皮質1層のスパインを頻回グルタミン酸刺激することでスパイン体積を大きくすることに成功した。つまり人工的に生体のシナプスの重みを変化させることに成功した。しかし、形態を変化させることができた割合は多く見積もって30%ほどであり幼若海馬脳スライスの錐体細胞よりも小さかった。現在さらに海馬と大脳皮質の錐体細胞の差違について解析を行っている。
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