研究課題
脳内の主要なモノアミン神経伝達物質の一つセロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン:5HT)は背側縫線核を起始核とするニューロン群に含まれ、脳の全域を支配している。セロトニン系の異常は鬱病などの精神疾患の原因の一つと考えられており、セロトニンの再取込阻害薬や三環系・四環系抗鬱薬などが広く治療薬として用いられている。しかしセロトニン受容体の種類は多く、その機能は極めて複雑である。本研究では、山森(基礎生物学研究所)によって報告された霊長類の一次視覚野および視床外側膝状体に特異的にそのmRNAが高濃度発現するセロトニン受容体5-HT1B/2A受容体の生理的機能を、麻酔・非動化したニホンザルの一次視覚野ニューロン活動の電気生理学的記録と受容体作動薬・拮抗薬の微小イオン泳動投与により解析した。刺激にはサイン波状に輝度変化するグレーティング刺激を用いてニューロンの視覚応答を誘発した。5-HT1B受容体作動薬は低発火頻度の反応に対して抑制、高発火頻度の反応に対して促通性の効果を示した。5-HT2A受容体作動薬はその逆の効果を示した。これらの結果は、活動依存的に発現調節を受けるセロトニン受容体が、ニューロンの活動レベルを、入力強度に依存して調節し、かつ、5-HT1Bと2Aが相補的な役割を担っていることを示しており、調節性神経伝達物質(ニューロモジュレータ)の働きを理解する上で極めて重要な知見である。
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Neuroscience 149
ページ: 962-975
http://www.vision.hss.osaka-u.ac.jp/index.htm