研究概要 |
末梢神経傷害後に発生する神経因性痺痛は,創傷治癒後に持続する難治性疾患である。この痺痛に関与する分子としてバニロイド受容体(TRPV1)やATP受容体(P2X)などのイオンチャネル型受容体,さらにアドレナリン受容体などが挙げられている。近年我々は,ノルアドレナリン(NA)がαアドレナリン受容体を介してP2X受容体機能を増強し,神経因性痺痛の発症要因となることを報告した(Maruo, et. al.,Pain 2006)。今回の研究では,TRPV1受容体とそれに拮抗する働きをもつK+チャネル(最近我々が発見した熱により活1生化される新規チャネル)(K_<heat>)に対するNAの作用について検討した。 先ず、1)K_<heat>チャネルの解析:ラットDRG神経細胞を対象に,パッチクランプ法を用いて,熱刺激によって誘起される全膜電流IK_<heat>を測定した。そして,K_<heat>チャネルが新規のイオンチャネルなのか,既知のイオンチャネルが熱に反応する性質を持っているだけなのか,をK^+チャネルの阻害薬を用いて薬理学的に調べた。次に、2)NAによってIK_<heat>が抑制されることをパッチクランプ法を用いて確認し,それに関わるアドレナリン受容体サブタイプや,蛋白キナーゼを調べた。 結果:ラットDRG神経細胞を熱刺激するとIK_<heat>が発生した。この電流を発生させているK_<heat>チャネルは,Ba^<2+>やテトラエチルアンモニウムに感受性があることがわかった。NAは濃度依存性にIK_<heat>を抑制した。その機序について詳しく調べたところ,α1アドレナリン受容体およびβアドレナリン受容体を介して,それぞれPKCならびにPKAの経路で抑制していることがわかった。
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