研究概要 |
目的:神経因性疼痛の発生機序に交感神経の関与が指摘されている.即ち,「末梢神経傷害が交感神経節後細胞の発芽を誘起し,その軸索がDRG神経細胞に到達している」という事実が報告されている.本研究では,「交感神経終末から放出されたノルアドレナリン(NA)がDRG神経細胞に作用することで神経因性疼痛が発生する」と仮説を立て,熱により活性化される新規K^+チャネル(K_<heat>)に対するNAの作用機序について詳細に検討した. 方法・結果:1)ラットDRG神経細胞を対象に,パッチクランプ法を用いて,K_<heat>活性化によって誘起される電流IK_<heat>を測定したのち,NAによるIK_<heat>の抑制機序について検討した.2)IK_<heat>はNAによって濃度依存的に抑制され,10μMの濃度で約70%まで抑制された.3)Cirazorine(α1アドレナリン受容体アゴニスト)とIsoproterenol(βアドレナリン受容体アゴニスト)はそれぞれIK_<heat>を約80%まで抑制したが,UK14304(α2アドレナリン受容体アゴニスト)はIK_<heat>に影響を与えなかった.4)NAの作用は,GF109203X(PKC阻害薬)およびH-89(PKA阻害薬)で部分的に阻害され,両者の併用により完全に阻害された.Forskolin(アデニル酸シクラーゼ活性化薬)とPMA(PKC活性化薬)はそれぞれIK_<heat>を約80%まで抑制し,両者の併用はNAと同等の効果(70%)を示した. まとめ:NAによるIK_<heat>の抑制は,α1アドレナリン受容体およびβアドレナリン受容体を介して,それぞれPKCならびにPKAを経由しているが,各々の作用が相乗的であることから,K_<heat>に対する作用部位が異なることが示唆される.NAによるK_<heat>の抑制は神経細胞の興奮性が高まるため,これが神経因性疼痛の発生要因となっている可能性が高い.
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