(財)高輝度光科学研究センター(SPring-8)および大学共同利用機関法人・高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光実験施設において、研究代表者および連携研究者らが細胞膜を化学的に除去したスキンド平滑筋標本のX線回折実験を行い、標本の太いフィラメントと細いフィラメントのリデリングの程度と力学応答を同時にはかった。具体的は、スキンド標本のX線回折像のうち、筋フィラメント由来のミオシンフィラメント由来14.4nm子後反射、アクチンらせん構造由来5.9nm子後反射、細いフィラメント格子状配列由来11.4nm赤道反射の相対強度の変化をImaging Plateで記録、SPrimg-8およびKED内ワークステーションで読み出し、研究代表者の所属研究室で解析を行った。X線回折と同時に標本の力学応答を測定し、フィラメントリモデリングと収縮の関係を定量的に検討した。 今年度については、正常収縮・弛緩のみならず、細胞内よりATPを除去したいわゆる硬直条件における反射プロファイル変化、特に赤道反射強度変化に焦点を当てて実験を行い、筋硬直時には筋収縮フィラメント格子間隔由来反射強度が顕著に減弱し、ATP再負荷によってある程度回復することを見出した。結果から、ATP除去により筋収縮フィラメントの配列が撹乱されるか、もしくなフィラメント構成タンパク質の脱重合により筋収縮フィラメント量が減少し、平滑筋細胞内においては筋収縮フィラメントリモデリングが起こっていることが示唆された。
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