研究課題
本年度は、昨年に引き続きヒト拡張型心筋症の原因遺伝子変異(トロポニンT点変異)を導入したノックインマウス(DCMマウス)につき解析を行った。DCMマウスにおける心機能低下及び突然死に至る一因として、神経・体液性因子の関与が推定されたため、特にレニン・アンジオテンシン系の病態における関与について検討を行った。心拡大を呈し、突然死する個体が出現し始める生後4週の時点で、PCR法を用いてDCMマウスの同定を行い、以後アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗薬(ARB)であるカンデサルタンの投与を行った。カンデサルタンは飲用水中に溶解して、飲水量より算出して一日量10mg/kgを投与し、非投与群と比較・検討した。カンデサルタン投与により、死亡率は著明に減少し、Kaplan-Meier法を用いた生存曲線による解析においても有意な死亡率改善が示された。投与後4-6週時点での解析では、心エコー上有意な左室拡張末期径及び収縮末期径拡大の改善が認められたが、左室駆出率(EF)及び内径短縮率(FS)には改善傾向は見られるものの、非投与群と比べて有意差は認められなかった。エクオリン法を用いた細胞内Ca^<2+>濃度変化(Ca^<2+> transient)と等尺性収縮張力の同時測定系による実験では、DCMマウスにおいて認められたCa^<2+> transientの増大及び収縮張力の減少については、カンデサルタン投与群においても同様の傾向を示した。また、両者の時間経過についても、カンデサルタン投与群でCa^<2+> transientの減衰時間の短縮傾向が認められた以外は、非投与群と同様の傾向が認められた。Ca^<2+> transientのピーク値と収縮張力との関係より推測した収縮蛋白系Ca^<2+>感受性については、DCMマウスにおいて著明に低下したCa^<2+>感受性は、カンデサルタン投与により改善しないことが明らかとなった。
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