研究概要 |
本研究の目的は、SV40tsA58T抗原をコンディショナルに発現する遺伝子導入マウスから条件的不死化内皮細胞を得る実験技術を確立し、胎生期の脈管形成、血管・リンパ管新生をin vitroで再構築し、その分化制御機構の理解を試みること、また、遺伝子改変マウスの解析におけるin vitroでの効果的な実験系を構築することにあった。 平成20年度の研究実施計画として、胎生期内皮細胞の分離・培養、および分化マーカーの発現の検討を計画していたが、胎生期(E9.5-E11.5)の内皮細胞の培養では、内皮・間充織転換に類似した内皮細胞自体の性質の変化が顕著であることが明らかとなった。その性質の変化にTGF-betaシグナルが関与することを示唆する結果を得たものの、当該シグナル伝達の阻害によって培養結果が大きく改善されるわけではなく、成体の内皮細胞のような安定した長期培養を成立させるには至らなかった。 しかし、SV40tsA58T抗原を発現する遺伝子導入マウスを利用した、成体の血管・リンパ管内皮細胞の分離・培養技術の開発については論文で公表し(Yamaguchi et al., 2008)、得られたマウス内皮細胞を解析に利用した成果も公表した(Ichise et al., 2009)。したがって、in vitroでの効果的な実験技術の開発という点では、意義の高い成果をあげることができた。また、論文の公表により、遺伝子改変マウスの解析においてSV40tsA58T抗原を発現する遺伝子導入マウスを利用した細胞培養実験を計画する、国内外の複数の研究グループからの共同研究の依頼を受けることとなり、本研究成果の波及効果も充分得られる結果となった。
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