研究概要 |
スンクスの飼育室温度を20℃以下で飼育すると繁殖が低下し,5℃程度になると不動化・死亡することが分かっている.そこで6-8℃条件下で寒冷暴露を行ったところ,不動化・死亡するものと生存するものとがみられた.死亡するものは,褐色脂肪組織が萎縮し,生存していたものは萎縮が見られなかった.その時に産熱タンパクであるuncoupling protein-1(Ucp1)及び甲状腺ホルモンII型脱ヨード酵素(type-2 deiodinase Dio2)の遺伝子発現量を測定してみると褐色脂肪組織の量に依存的になっていた.マウスにみるような低温抵抗性の場合は,両者の遺伝子は低温に反応し,直線的に増加した. スンクスの餌は養鱒用の餌を用いているが,この粗タンパク構成は約50%であり,マウスに与えた飼料よりけるかに高い.そこで低温暴露の条件に加えて,脂肪リッチな飼料を給与することにより耐寒性がどのように変化するかを観察した.その結果,褐色脂肪組織は肥大化し,耐寒性はより増加し,Ucp1やDio2の発現量も増加した.このことは1)低温+脂肪添加,2)低温+通常食,3)25℃の通常飼育温度+脂肪添加,4)通常飼育温度+脂肪無添加の中で,低温+脂肪添加のみが低温に反応し,遺伝子量を増加させた. このことは低温環境になる前に栄養条件を良くし,褐色脂肪組織が肥大化しておれば,一定の耐寒性は増加する,ということになる.スンクスの直腸温度を測定したところ,午前に低温,午後に普通の体温に復帰する日内休眠という現象が発見された.したがって休眠(低体温)時に,低体温からのリカバリーに必要なエネルギー不足という考察もできる結果であった.
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