研究概要 |
スンクスの生息分布域は熱帯・亜熱帯で、飼育下での経験で、低温状態では繁殖の停止、さらには死亡することもある。その原因を探ったところ、産熱タンパク遺伝子Ucp-1の変異による産熱性の不足、日内休眠による低体温、その低体温からリカバーできるだけのカロリー不足が原因と考えられた。その場合に顕著な褐色脂肪組織の萎縮が観察され、産熱タンパク質のuncoupling protein-1,Ucp-1および甲状腺ホルモンのII型脱ヨード酵素(type-2 deiodinase,D2)の発現量の減少がみられた。高カロリー食としての高脂肪食、蔗糖水の投与によって褐色脂肪の肥大化が観察され、耐寒性が増大した。産熱器官としての褐色脂肪組織の萎縮が回避できれば、低温に対する抵抗性が増加するものと考えられる。しかしながら高タンパク食で腹腔内脂肪がほとんど蓄積せず、蔗糖水で容易に高血糖を示すスンクスは長期に高脂肪高蔗糖の飼料で正常な飼育ができるかどうか疑問である。このようにスンクスは産熱器官としての褐色脂肪組織の機能を研究する上で、ユニークなモデル動物であることが明らかになった。哺乳類の体温恒常性維持における体外エネルギーの保証という概念が提唱できそうである。
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