ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、腫傷性疾患(成人T細胞白血病:ATL)および炎症性疾患(HTLV-1関連脊髄症:HAM/TSP、ぶどう膜炎、皮膚炎および関節炎)を引き起こす。我々が樹立したHTLV-1tax遺伝子導入(Tax-Tg)マウスは、T細胞白血病および関節炎を引き起こす。このマウスを解析することにより、HTLV-1の病原性を解明することを目的としている。 1.Tax-Tgマウスの病変部位でのtax遺伝子発現量と病態の関連 白血病および関節炎発症マウスのtax遺伝子発現量を解析したところ、白血病発症マウスでは、発症していない同腹のマウスよりやや高い程度であった。一方、関節炎を発症したマウスでは、同腹の健康なマウスよりも20-50倍という高い発現量を示した。また、白血病細胞では炎症性サイトカインはほとんど検出されなかったが、関節炎では非常に高い発現が認められた。 2.T細胞白血病と関節炎発症マウスの細胞学的差異 白血病マウスの白血病細胞は、CD4陽性、CD8陽性のT細胞由来であり、なかには混合タイプ(CD4^+CD8^+)も見られる。関節炎の関節に浸潤している細胞はT細胞が主体であるが、そのフェノタイプは特定できなかった。しかし、白血病細胞の抗tax抗体による染色ではその発現が高い細胞と、低い細胞が混在しているが、関節炎浸潤細胞では、ほとんどの浸澗細胞がTaxタンパクを高発現していた。 以上の結果から白血病細胞と関節炎における浸澗細胞の大きな差異はtax遺伝子の発現量であることが明らかとなった。両疾患ともに発病までには長期間(最低8ヵ月)を要するが、最近加齢とp53の関連が注目されており、今後p53との関連について解析する予定である。
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