研究概要 |
我々が樹立したヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)tax遺伝子導入(Tax-Tg)マウスは、ヒトにおいてHTLV-1が腫瘍性疾患(成人T細胞白血病:ATL)および炎症性疾患(HTLV-1関連脊髄症:HAM/TSP)を引き起こすのと同様、異なった疾患(T細胞白血病および関節炎)を引き起こす。このマウスを解析し、Taxの病原性への関与を解明することを目的とした。 1.HTLV-I tax遺伝子導入マウスにおけるtax遺伝子発現量を規定している因子の検索白血病を発症したマウス群と関節炎を発症したマウス群ではtax遺伝子の発現量が明らかに異なる。白血病マウスでは、対照マウスに比し、0.3-8倍の発現量であったが、関節炎を発症したマウスでは、14.4-72.5倍と高い発現量を示した。以下記載するサイトカイン、p53発現量等に差がみられることから、白血病細胞および関節炎浸潤細胞の由来が異なることが示唆された。 2.関節炎マウスにおける浸潤細胞とサイトカインの検索 炎症性サイトカイン(IL-1β,IL-6,MIFおよびTNF-α)の発現量を半定量RT-PCRで測定したところ、関節炎マウスではTNF-αを除いて高い発現が確認された。一方、白血病マウスでは、少数のマウスにIL-6が検出されるが、多くは検出されなかった。血清中サイトカインは、IL-6のみが関節炎マウスで有意に検出された。 3.新たなHTLV-I病態モデルの開発 疾患発症前Tax-Tgマウスのp53機能について解析したところ、p53標的遺伝子の発現が、対照マウスに比較し明らかに低下しており、p53依存性のアポトーシスも減少していることを見出した。このことは両疾患発症にp53が重要な役割を果たしていることを示しており、Taxとp53の関連を検索する良いモデルとなるこどが示唆された。
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