齧歯類とヒトでは脳の組織学的組成が大きく異なる。すなわち、脳組織は神経細胞体が多数を占める灰白質と神経線維が多数を占める白質によって構成されるが、その灰白質と白質の比や、脳溝(脳の皺)の有無などが大きく異なる。これら基本的な脳組織の相違に起因して、これまで齧歯類を用いて得られた実験結果がヒト、特に医療現場では齧歯類同様の結果を得られなかった可能性がある。そこでこれまでに中大脳動脈梗塞モデルを作製し、ブタの脳梗塞モデルがヒトの疾患モデルとして非常に有用である事を明らかにした(J Neurosurg.2006 104(2 Supp1):123-32)が、今後の再生医療への応用を鑑みた場合、より臨床に即したラクナ梗塞モデル作製の必要がある。そこで、初年度は、疾患モデルとしてブタのラクナ梗塞モデル作製を群馬大学脳神経外科学と共同で試み、疾患モデルとしての有用性を検討した。 前脈絡叢動脈を閉塞させる事で疾患モデルの作製を試み、病理学的な類似性だけでなく白質障害により運動障害が起きる事や、梗塞時間により可逆あるいは不可逆的な変化になるなど、臨床的に非常に重要な事柄が明らかにした(Stroke.2008 Jan;39(1):205-12)。従って、今年度は計画通り、このモデルを利用し、再生医療への応用を検討する。 また脳障害に伴う運動障害をより明確に検出するため、データロガを搭載した加速度計を体表に固定し、ケージ内でブタの動きに伴う3次元での加速度変化の範囲を調べた。その結果、ブタの動きに伴う加速度変化の記録が可能ではあるものの、十分な解析のためには最大4Gの測定範囲をもつ加速度計が必要と考えられた。 以上の通り、疾患モデルの病理学的評価はもとより、臨床症状の客観的評価も整いつつある。本年度は最大目標である再生医療への応用へ研究の最終毅階へ予定通り進める。
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